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脳卒中のリハビリテーション

脳卒中のリハビリテーションについて

リハビリの重要性(概論)

脳卒中リハビリテーションとはどういう経過をたどるのか(急性期〜生活まで)一般的には急性期治療を受けた病院で開始され、その後必要があれば回復期病院などに転院しリハビリテーションを継続します。状態に応じて期間は異なりますが、発症から半年程度かけて医療機関でのリハビリテーションで身体機能の向上や日常生活の自立、社会復帰を目指します。

脳卒中リハビリテーションの経過の図

リハビリの効果はどんなもの?

脳卒中後に起こる様々な症状に対して有効性が示されています。歩行障害、上肢機能障害、高次脳機能障害、摂食嚥下障害等に対してそれぞれ専門的なトレーニングを実施することで、機能の向上が得られることがわかっています。

参考:日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会.脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕.日本脳卒中学会

リハビリはいつから始まる?

状態によって前後しますが、一般的には発症後24時間以降〜48時間以内にベッドから体を起こす離床トレーニングを開始することが推奨されています。
医療機関によっては脳卒中ケアユニット(SCU)と呼ばれる脳卒中専門病棟があり入院後早期から集中的なケアやリハビリテーションを実施していきます。

参考:日本脳卒中学会.脳卒中急性期リハビリテーション診療の指針.脳卒中.2024;46(1):47-86.

入院中のリハビリはどんなことをするの?

状態に合わせて理学療法、作業療法、言語聴覚療法が処方されます。それぞれの症状に対するトレーニングをはじめ、起き上がる、座る、立つ、歩くといった基本的な動作のトレーニング、そして実際の生活で求められる作業やコミュニケーションのトレーニング、仕事や社会復帰に向けてのトレーニングなど多岐にわたります。お一人お一人の状態や目指したい生活に合わせて内容を調整します。施設によっては電気刺激やロボット等の機器や装具等を活用することがあります。

退院後のリハビリと生活支援は?

残存症状や目指す生活に合わせて介護保険サービス(通所・訪問リハビリ等)を利用し、必要に応じて医療機関での外来リハビリを継続します。高次脳機能障害などにも配慮し、生活・就労・福祉制度の活用を含めた支援体制を整えます。

家族ができるサポートのポイントは?

脳卒中後の症状は多彩で個人差がありますので、主治医やリハビリの担当療法士からどのような症状がありどのようなサポートが有効かしっかり聴取することが重要です。特に高次脳機能障害は他者から見えにくい症状も多いので、担当の作業療法士や言語聴覚士に相談されることをお勧めします。参考までに、運動の観点では支援者が一緒に運動に取り組むこと 1) や失語症がある場合は支援者が話す時間を十分確保し、会話のパートナーとなることも有効 2) であると言われています。

  1. Vloothuis JDM, Mulder M, Veerbeek JM, et al. Caregiver-mediated exercises for improving outcomes after stroke. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2016;12:CD011058. doi:10.1002/14651858.CD011058.pub2
  2. Simmons-Mackie N, Raymer A, et al. Communication Partner Training in Aphasia: An Updated Systematic Review. Arch Phys Med Rehabil. 2016 Dec;97(12):2202-2221.e8. doi: 10.1016/j.apmr.2016.03.023. Epub 2016 Apr 23. PMID: 27117383.

リハビリを続けるために大切なことは?

達成したい目標を担当者や家族と一緒に決定し共有することが重要であると言われています。
必要に応じて目標を見直したり負担の調整を行うことも必要です。

脳卒中のリハビリテーションに関するよくある質問

  • 体調不良の場合、受診をする目安はありますか?

    脳卒中においてはFAST(Face:顔のゆがみ/Arm:片腕の脱力・しびれ/Speech:ろれつが回らない・言葉が出ない/Time:発症時刻の確認)が重要であると言われます。これらの症状が突然出た場合は、すぐに医療機関へ連絡してください。日常の体調不良については、主治医が示す受診条件に従ってください。

    参考:日本脳卒中学会・日本脳卒中協会.脳卒中の予防・発症時の対応.2021–2022年版. https://www.jsts.gr.jp/common/asset/pdf/onset.pdf

  • 装具が合わない、足が引っかかるなどの症状がでました。何が必要ですか?

    装具の調整が必要かもしれません。担当の理学療法士に早めに相談し、装具を含め靴や足部の状態、歩行環境を含めて確認してもらいましょう。

  • 再発予防をしていくために必要なことはありますか?

    日本脳卒中協会が示す脳卒中予防十ヶ条が参考になります。
    運動の観点ではウォーキングなどの「楽である〜少しきつい」と思うような運動を週150分以上実施することが推奨されています。また、座っている時間が長い場合は30分〜60分ごとに立ち上がるなどの工夫も重要です。運動機能に個人差がありますので、負荷の調整方法は担当の療法士にも相談してください。

    参考:日本脳卒中協会.脳卒中予防十か条2025. https://www.jsa-web.org/citizen/85.html World Health Organization. WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour. 2020.

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